日本および世界のさまざまな分野で活躍するこだま寮(五ヶ瀬中等教育学校寮)卒寮生の進学とキャリア形成の経験を現寮生に届ける月刊インタビュー誌

#003末永 佳奈

2018.03

末永 佳奈(旧姓:飯干)

2000年卒

近畿大学附属広島高等学校・中学校/東広島校 非常勤講師(英語科)

【略歴】
1982年五ヶ瀬町生まれ。2004年広島大学教育学部第三類英語文化系コース卒。株ビーシーイングス田中学習会に入社し、塾講師として4年半勤務。その間、4歳高3まで多様な年齢の生徒に英語を指導。その後、出産のため退社。再就職し、現職では高校生を指導。

塾講師と私立高校の非常勤講師の経験を持つ末永さん。中等教育学校となって6年間の課程を終えた最初の代の卒業生です。さまざまな立場からの教育へのかかわり方や、出産・育児とのバランスについて語ってもらいました!

|今のお仕事|サポート役として求められる非常勤講師

英語科の非常勤講師として、高校3年生に授業をしています。私立高校には、非常勤講師、常勤講師、専任教諭の3種類のつとめ方があります。非常勤講師は、同じ学年を担当する専任教諭からテキストや進行ペースについて大枠の指示を受け、毎日の授業と補習、質問に来る生徒への対応を担当します。私立の常勤講師や専任教諭の先生は、通常の教科指導以外に、学校運営の仕事や、部活動の指導、生徒を呼び込むための広報活動に職員会議にとかなり多忙で、じっくりと生徒対応する時間がとりたくてもとれません。なので、私たち非常勤講師が自分の授業時間終了後も残って、サポート役に徹するようにしています。経験を積んでくると、定期試験問題作成や受験の個別指導を任されることがあり、私も担当しました。

|これまでの道のり|塾講師の経験と退職・再就職

中1の時に英語の教員になりたいと思い、教育学部に進学しましたが、宮崎県の公立高校の採用試験で落ちてしまいました。通常であれば翌年の採用試験合格を目指すところですが、五ヶ瀬の英語の先生から、「あなたは教員よりも塾講師の方が向いているかもね」と言われたことが心のどこかに残っていたこともあって、塾の採用試験を受けてみました。塾講師となってみて、学校の一斉授業ではカバーしきれない学力の生徒を少人数でしっかり見ることができる一方で、学校の授業内容では知的欲求を満足させられない生徒にもっとレベルの高い教育を受けさせることもできるという点が、塾の強みだということを知りました(注。

入社して4年半後の出産もターニングポイントとなりました。夫婦とも夜型生活の塾講師で、実家に頼ることもできない環境だったので、子育てのためには退職しか選択肢がありませんでした。これが学校の教員であれば、育休や産休という制度の利用や勤務時間の調整が可能だったかもしれないと思うと、退職前後は「もっと考えて職を選べばよかった」と考えることもありました。その後、子どもの成長とともに再就職を考えたときに、授業以外を含めて生徒と長時間の関わりが持てる学校の教員という職業が、私には一番魅力的に思えました。ただ、子育てとの両立を考えると、教科指導だけが基本の非常勤講師という形が、今の段階では現実的だろうという結論にいたりました。

|ワーク&ライフ|家庭とのバランス

月曜日から金曜日まで、9~17時半に仕事をしています。今年度は週17コマの授業を持ちましたが、授業時間以外は、授業のための資料準備、小テストの作成と記録、提出物の確認、定期試験の作成、成績の入力、放課後には補習授業や個別の質問対応を行っています。非常勤の私でさえ、これらをやっているとほぼ空いた時間は埋まってしまいますので、正教諭の先生がどれだけ忙しいことか!!五ヶ瀬の先生は、さらにハウスマスターや宿直の仕事もあるので、本当に尊敬します!!!

1日の生活サイクルで見ると、朝6時に起床し、7時半に次男を保育園に連れて行ってから片道約1時間かけて出勤します。勤務を終えて、18時半に保育園にお迎えに行き、子どもたちのご飯とお風呂等をすませます。22~0時には仮眠をとるか、場合によっては残った授業準備や英語資格の試験勉強などの自己研さんにあてています。仮眠後、塾の仕事からもどった夫の食事を作り、夜中の1~3時くらいが夕食を食べつつ録画していたテレビを見たりする夫婦団らんの時間です。そして3~6時まで睡眠をとるのが、私の24時間のサイクルです。睡眠時間を分割することで、夜型の夫とコミュニケーションの時間をとっています。

|五ヶ瀬での経験|「リトルティーチャー」の先がけ

高3の時に、寮の学習時間中、中学生に英語を教える機会を週に1回設けてもらったことがあります。人生で初めて、複数の生徒の前で英語を教えた瞬間でした。授業をどんな風にやるか、当時の英語の先生と相談しながら、ざっくりとした「指導案もどき」を作り、四苦八苦しながら当時の中3に英語を教えました。この経験で、教えるということをより具体的に認識したと同時に、英語の教員になる夢がより強くなりました。これは、中高一貫で全寮制である五ヶ瀬だからこその経験だと思います。この当時の試みが、「リトルティーチャー制」という形となって後輩へ受け継がれていることを後に聞き、感慨深い思いがあります。

|後輩に一言|苦手なことや痛みにも向きあって

具体的な進路目標がある人もない人も、自分の興味のあることはもちろん、苦手なことにも恐れずチャレンジしてみてください。様々な経験が、あなたという世界で唯一の人を創りあげていきます。
もし失敗や挫折を経験することがあれば、その痛みを知ってください。特に教育分野を目指す人は、生徒に「無理を強いる」場面が出てきますが、その生徒の気持ちを考えられる人であってください。それから、苦手な生徒や先生とたくさん話をして、その人を受け入れる、そして自分を受け入れてもらうにはどうしたらいいか、試行錯誤してください。それらの経験が言葉に重みを持たせて、人にひびいていきます。
最後に、今のうちに五ヶ瀬の先生方の授業をよく観察してください。授業中の教師の言動には全て意味があります。もっともっとお伝えしたいことはたくさんあります。教育分野に興味のある方はお気軽にご質問ください。

影響を受けた本
天の瞳 / 灰谷健次郎個性的な主人公・倫太郎少年の成長を追う中で、教師は「教える」のではなく「人に添う」職業だということを考えさせられました。教育分野を目指す方はぜひ一度読んでみてください。
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