日本および世界のさまざまな分野で活躍するこだま寮(五ヶ瀬中等教育学校寮)卒寮生の進学とキャリア形成の経験を現寮生に届ける月刊インタビュー誌

#002甲斐 考太郎

2018.02

甲斐 考太郎

2004年卒

Orange株式会社 代表取締役 CEO

【略歴】
1985年生まれ。宮崎県出身。2008年、早稲田大学政治経済学部卒業。同年、株式会社テレビ宮崎に入社。12年、Orange株式会社を創業。好きな色はオレンジ。新しい土地を訪れたときに必ずしたいことは、市場巡り・川泳ぎ・墓参り。

こだま便り第2回は、旅行メディアを手がけるOrange株式会社を立ち上げた甲斐さんです。起業家の甲斐さんはどのようなことをしているのか、そしてどうして会社を始めるにいたったのでしょうか。非常に前向きな甲斐さんにリアルな話を語ってもらいました。

今どんなことをしているんですか?

ウェブを使って新しい旅のスタイルを提案する会社を経営しています。主な事業のひとつにTRIPSというウェブメディアがあります。国内外にはガイドブックやこれまでのウェブサイトにのっていない情報がまだ無数にあります。たとえば五ヶ瀬にも、住んでいる人しか知らない名物や人の情報がたくさんあると思います。それを人の力を使って情報を提供してもらうことで、見えるようにしようというものです。
もうひとつの事業は、年間4,000万人が利用する成田空港周辺の観光開発です。空港の外には成田山といった観光地もあるのですが、多くの人が立ち寄らずに通過していってしまいます。せっかく多くの人が利用する成田で、人の滞在時間を増やすにはどうしたらいいか、地域の人と考えています。

これまでの道のりを教えてください

「竜馬がゆく」という本から影響を受け、進路選択時には日本を変えられるような政治家を目指していました。そこで、大学では政治の勉強をしながら、選挙の手伝いなど政治の現場を経験しました。しかし、そのうちに日本を変えるためには経済の力も大事だと考えるようになりました。その一方で、大学時代には旅行の楽しさにも魅せられ、バックパックを背負って海外を回りました。

そのような大学時代を経て、就職先として選んだのは宮崎のテレビ局です。メディアを通して宮崎の隠れた観光の魅力を発掘したいと思い、営業の仕事をしながら社内で新規事業の提案を行いました。残念ながらこの提案は通らず、そのまま会社員を続ける人生でいいのかと思い、独立を選択することにしました。では何をするかと考えたときに、やっぱり旅のことが好きだという思いがありましたが、その選択に3割は迷いもありました。しかし、まわりに自分は旅のことをやるんだと表明していくうちに、それが自分の本当にやりたいことだという覚悟ができてきました。そして、ウェブサービスをつくるエンジニアなど必要な人材を集めて、会社を立ち上げたのです。

空港内でプロモーション活動をしている様子

普段はどういった生活ですか?

今は6人くらいのチームで、自分はエンジニアに対してこういうものをつくりたいというイメージを伝えたり、外部に営業をしたりということをしています。成田のプロジェクトでは、地元の人と集まってどういうことをすれば旅行者が魅力的に感じてくれるかを話し合ったり、成田空港周辺を車でまわっておもしろいスポットがあればそこで何ができるかアイデアを考えたりして
います。地域の魅力を発掘しつつ、文化が異なる外国のお客さまを受け入れるにはどうすればいいか考える役割があります。

こういうことをしながら常に「働いて」いますが、同時に遊んでいるような感覚です。一日中市内をまわっておもしろい取り組みをしている人を見つけては、どういうことができそうか可能性を考えるのはとても楽しいです。ただし、会社として決算や株主への報告ということも求められるので、経費の計算といった事務作業もやっています。起業以来6年間で、ピンチを招いてしまうことも何度もありましたが、必ずしも苦労とは考えずにやってこれました。

五ヶ瀬での経験でどんな影響を受けましたか?

振り返ると、フォレストピア研究が今やっていることの原点になっているような気もします。「五ヶ瀬秘境図」をつくるというのがテーマで、マウンテンバイクに乗って秘境スポットを撮影してまわったのです。とても楽しい経験で、最終的に秘境図は町役場の方にも認められて、役場に置かせてもらうことになりました。
生活面では、人生についてよく友達と寮で長い時間語り合っていました。その中で、自分がどういうことをしたいかも考えることができました。今思うと、これだけたくさん話せる相手がいたことは、こだま寮生活ならではのラッキーな環境でした。

最後に一言お願いします!

フォレストピア研究に取り組んだとき、授業の時間にマウンテンバイクで外を回るのは難しいかと思いましたが、しっかり筋を通して説明すれば認めてもらえることが分かりました。そこで、できないかもしれないと自分で制限をかけていたことに気づいたのです。このことに早く気づければよかったと思いましたが、現場に出て動きまくりながら物事を進めていく経験をすることで、今につながる自分の強みを培えた気がします。
尊敬する孫正義さんの言葉ですが、年齢に関わらず95%の人は迷いながら将来を決められないようで、まず登るべき山を決めてそこに進むことが大事だそうです。好きなことがあれば他人や環境のせいにせず、工夫して道を見つけていくべきではないかと思います。

影響を受けた本
竜馬がゆく / 司馬遼太郎維新志士・坂本龍馬の一生を描いた長編時代小説。竜馬だけでなく、激動の時代を生き抜いた若者たちの群像劇に、胸が熱くなり、宮崎を飛び出したくなりました。
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