日本および世界のさまざまな分野で活躍するこだま寮(五ヶ瀬中等教育学校寮)卒寮生の進学とキャリア形成の経験を現寮生に届ける月刊インタビュー誌

#001田村 康一郎

2018.01

田村 康一郎

2003年卒

フリーランスコンサルタント/大学院生

【略歴】
1985年都城市生まれ。2007年東京大学工学部社会基盤学科卒、2009年同大学院国際協力学専攻修士課程修了。その後、国際協力事業のコンサルタントとして民間企業に勤務。アフリカ、アジア、中東の20を超える国々で交通計画などのプロジェクトに取り組む。2017年より8年間勤めた会社を退職し、奨学金を得てニューヨークにある美術大学プラット・インスティテュートの修士課程でプレイスメイキングという分野を学ぶ。そのかたわら、フリーランスでコンサルティング業務も手がける。

卒業生インタビュー「こだま便り」の第1回は、国際的なフィールドで数多くの経験を積んで、現在は新しい分野で留学にチャレンジしている田村さんです。グローバルな仕事や生活の様子と、どのように五ヶ瀬での生活がつながっているのかお話を伺いました。

今どんなことをしているんですか?

ニューヨークにある大学院で、「プレイスメイキング」という分野について勉強しています。日本ではまだなじみのない言葉なのですが、簡単に言うと、人々に愛着の持てる場所をつくってまちをよいものにしていこうというアプローチです。宮崎市で橘通に置かれているピアノや、夏の青島ビーチのフードスペースは、身近な例かもしれません。機会があれば見てみてください。このプレイスメイキングの手法を使って、アフリカなどの発展している都市や、一方で日本の小さい市町村で人々に愛される空間をつくるということを目指しています。
また、大学院に通いつつ、これまでやってきた国際協力関係のプロジェクトのお手伝いを続けています。忙しいですが、会社をやめてやりたい勉強とプロジェクトに自分次第で柔軟に時間が使えるので、恵まれている環境です。

これまでの道のりを教えてください

アメリカに留学する前は、8年間国際協力の仕事にたずさわってきました。JICA(国際協力機構などから仕事を受けて、アフリカやアジアの国に数週間滞在して、交通問題への対策や国の発展のための仕組みづくりなどを行っていました。大学には文系で入学したのですが、土木工学(社会基盤学)という分野に出会い、人々の生活を支える道路や橋や鉄道などを国際的なプロジェクトでつくっていくということに強くひかれました。実際に仕事としてそのようなプロジェクトにたくさんの国で数多く関われたことは、とても刺激的でした。

ただ、長くその仕事を続けているうちに、もっと日々の生活に近い小さなレベルのプロジェクトをしたいと思うようになり、そこでプレイスメイキングという手法に興味を持ちました。また、一度留学という経験をしてみたいというのが、実は五ヶ瀬にいたときから持っていた想いだったので、少し遅くなってしまいましたがチャレンジしました。

ルワンダ・タンザニア国境でのプロジェクトで行ったワークショップ

普段はどういった生活ですか?

ニューヨークのブルックリンという街を、自転車で走り回って楽しんでいます。この街ではたくさんのプレイスメイキングの事例やイベント、専門家のネットワークがありますし、世界中から実に多様な人々が集まっています。とても刺激的で、自分に合った環境です。学校の同級生も世界各国からの留学生が多く、背景が違う人たちと3時間の授業を通して英語で難しい議論をして、話をまとめていくのはなかなか大変です。
コンサルタントをしていた時は、毎月どこかに海外出張しているような生活で、年の半分しか日本にいませんでした。出張では現場に出てのフィールドワークや聞き取り調査、分析・提案の作成、現地政府との会議・プレゼンテーションといったことをやっていて、けっこうハードです。毎日がフォレストピア研究といったところでしょうか。それでも、多くの国でプロジェクトに関われることは、とても素晴らしい体験で世界中に人のつながりもできました。

五ヶ瀬での経験でどんな影響を受けましたか?

部活の剣道がいちばん強く記憶に刻まれています。当時はとても厳しく、毎日練習漬け、週末は遠征漬けでした。それに、今考えてもかなり寮学習の時間で勉強もしていたと思います。海外を飛び回る仕事は体力も気力も使うのですが、五ヶ瀬にいた当時の経験が生きていたかもしれません。それと、今もシェアハウスに住んでいて寮生活に近いのですが、出身や年齢が違う人らとの共同生活は五ヶ瀬時代と通じるものがあり、多様な人々とうまくやっていくやり方をこだま寮の生活で学んだような気がします。
大学からはずっと東京やニューヨークといった大都会に住んでいるので、川遊びができる環境はいつも懐かしく思い出しています。そういうことが当たり前にできるというのはやっぱり素晴らしいと思います。

最後に一言お願いします!

どのような形でもいいので、ぜひ先進国にも新興国・途上国にも飛び込んでもらえればと思います。そして、そこの空気や人々に触れて、世界の広さ・多様性を感じてほしいです。国際協力や留学といったことに関心のある方は、ぜひ気軽にお問い合わせください!

影響を受けた本
私の地球遍歴 / 石弘之ジャーナリストである著者が世界の環境破壊の現場をレポートした本で、海外の問題に関心を持つきっかけになりました。
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