日本および世界のさまざまな分野で活躍するこだま寮(五ヶ瀬中等教育学校寮)卒寮生の進学とキャリア形成の経験を現寮生に届ける月刊インタビュー誌

#007 堀 アトム

2019.10

堀 アトム

2005年卒

特定非営利活動法人フードバンク日向 理事長 日本通運株式会社延岡営業所勤務 (写真右が堀さん)

【略歴】
1986年福岡県生まれ。2006年九州工業大学情報工学部生命情報工学科中退。航空自衛隊入隊後、航空管制~総務・教育訓練。退官後は日向民主商工会で労働保険事務をしながら経営・税務の知識を学ぶ。2017年に日向市でkakure café NICOを家族で開業し、地域貢献活動の一環として「こども食堂」を始める。2019年1月に「こども食堂では届けられない困っている世帯にこそ物資を届けたい、食品ロスで悩む生産者・企業と上手く世帯を繋げて食品ロスを削減したい」という思いから、フードバンク日向を設立。現在、特定非営利活動法人(NPO)化。

会社につとめるかたわら、みずからNPOを立ち上げてフードバンク活動に取り組むという“二刀流”の堀さん。そんなエネルギッシュな活躍の裏にある、苦労を重ねた過去と、それを乗りこえて見つけた使命について、包みかくさず語ってもらいました。

|今のお仕事|会社づとめとフードバンク活動の二刀流

日ごろは日本通運株式会社延岡営業所にて配送や海運コンテナをあつかう作業などをしています。

勤務外の時間をつかって、フードバンク活動やこども食堂・学習支援の活動を行っています。フードバンクとは、まだ安全に食べられるのに個人宅やお店であつかうことができない食品を寄付してもらって、必要としている人や施設に届ける仕組みです。現在は支援活動を行いながら、フードバンク活動のためのシステムづくりや広告宣伝用ツールづくり、新規支援企業開拓などをチームの仲間と共に行っています。

NPO法人フードバンク日向の事業理念「私たちは、誰もが食を分かち合い、地域で子どもたちを守り育てる社会をつくります」を形にし、食品ロスを削減し、少しでも多くの支援が必要な方々に宝物として届くよう、活動を行っています。

|これまでの道のり|苦労の先に見えた使命

大学に進学しましたが、一人親で下に4人の兄弟がいたので中退し、航空自衛隊で勤務をしながら兄弟の学費工面に努力しました。自衛隊勤務時に予想外の双極性障害(注)にかかってしまい、1年ほど入院しました。障がい者認定を受けることになり退官しましたが、「絶対に負けてたまるか!障がい者手帳は返して、はい上がって、絶対に家族を持って、幸せにできるようになる!」と覚悟し、自分の置かれた状況で前向きに精一杯がんばることをコツコツ続けていました。この経験が第一の転換点です。

弟の大学卒業と就職を機に、実家を建てることになり、日向市に恩返しをしたいという家族全員の思いから、こども食堂を始められる場所を探しました。そして、実家と店をつくり、こども食堂を開催できるようになりました。

生活に困っている人たちの支援として始めたこども食堂ですが、誰でも参加OKなこども食堂で支援を行うのには限界があります。支援していただく生産者・企業の方々は「困っている人にこそ届けてほしい」という思いが強く、非常にジレンマに悩んでいました。そこでフードバンクの仕組みを知り、実現したい!という夢ができ、任意団体をつくり、動き出しました。実際に今困っている世帯を知って何とかしたいと思ったことで、使命感は人を本気にするのだと、この時初めて実感しました。

(注:気分の大きな浮き沈みをくり返すこころの不調)

フードバンクに取り組む仲間と(後列水色のTシャツが堀さん)

|ワーク&ライフ|二刀流生活の中で貴重な家族の日

仕事と別にフードバンクの活動を行っていることもあり、妻と息子にはたくさんの迷惑をかけています。しかし、損得関係なしに心から応援してくれている妻がいてくれているからこそ成り立つ活動でもあり、心から感謝しています。

月に一日はできるだけ家族の日をもつようにして、家では家事育児を積極的に手伝うことで、バランスをとっています。僕にはもったいないくらいでき過ぎな奥さんの存在と、10ヶ月の息子の豊かな表情と日々の成長が、今の心の原動力です!

|五ヶ瀬での経験|最高の“トレーニング環境”

こだま寮生活の環境は、当時は不自由が多く満たされていない感覚もありましたが、今改めて考えてみると、どれだけ学びに恵まれた環境だったかと、活かしきれなかった事を少し後悔しています。時間さえあれば走りこんだり体を鍛えたりしていたので、五ヶ瀬という高所トレーニングに適した地で体をつくり上げられたことは、後の自衛隊での仕事にとてもよく役立ちました。

|後輩に一言|夢、そして使命

夢をとても大きく持ってください!五ヶ瀬の6年間を精一杯楽しんでください!必ずしも、自分の夢が職になるということはありませんが、自分の思ってもみなかったところで与えられる、もしくは気付く素晴らしい使命があります。

影響を受けたことば
「アトム。健全な精神は健全な肉体に宿るのだよ。」航空自衛隊勤務時の隊長の言葉です。
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