日本および世界のさまざまな分野で活躍するこだま寮(五ヶ瀬中等教育学校寮)卒寮生の進学とキャリア形成の経験を現寮生に届ける月刊インタビュー誌

#008 池野 将史

2021.02

池野 将史

2001年卒

一級建築士

【略歴】
西都市出身。関東学院大学工学部建築学科卒業。ハウスメーカーにて注文住宅の設計職としてキャリアをスタート。同社にて、業務企画推進(本社スタッフ)を経て、建設会社と工務店にて集合住宅や企業オフィス等の建築や改修に携わる。その傍ら、建築士資格予備校の非常勤講師を勤める。現在は不動産ディベロッパーの開発部にて 商業ビル建設に携わる。

学びの森で6年間を過ごした池野さん。現在は一級建築士として建物の設計に携わりながら、会社の開発部として活躍しています。現在のお仕事や普段の生活、五ヶ瀬での経験について語ってもらいました!

|今のお仕事|建設を提供していく

西新宿の不動産ディベロッパー会社に勤務し、開発部の設計部門にて商業ビル建築の設計、監理の仕事をしています。図面の詳細なやり取りや現場打合せ、検査等も行っています。務めている会社は平たく言うと大家業を生業としていて、そのビルの賃貸収入を得て事業を形成しています。我々開発部は、安定的な収益確保のために、会社が保有するためのビルを増やしたり更新したりしています。

|これまでの道のり|自分にあった仕事とは何か

建築の進路を考え出したのは前期生3年の頃です。それまでは美術教師になりたいと考えていましたが、美大に進学するための環境や経済的なことなどを鑑みると、これは厳しいなと判断しました。絵を描くこととは少し違いますが、デザインならどうだろうというアプローチから、建物の形を考えるのって楽しそうだし、カッコいいねと思い始めました。

そして、大学では建築学科に入りました。建築学科は課題も多く、非常に忙しい学科です。大学生活は多忙を極めましたが、人より時間が少ないことが学びへの執着力になり、充実した学生生活を送れていたと思います。

社会人としてのスタートは、注文住宅の設計職となりました。一件ごとに、ご家族と話し合いながらの住まいづくりは充実感もあり、職を離れた今でもまたやりたいと思える仕事でした。しかし数多くの住宅に関わるなか、建築技術者としての成長に限界を感じていました。

そこで、既に30歳を過ぎていましたが、転職と一級建築士の資格取得を決意します。単に建築といっても用途や構造、工法によって求められる知識や技能が異なり、多くの人の関りで成り立っています。最初の頃は、自分の当たり前が通用しなかったり、企業文化や目的によって優先順位が違ったりすることに戸惑いもありましたが、相手の立場や役割を知ろうとすることにより、自身の仕事の幅が広がっていきました。また、複数の企業で働くことや、様々な用途の建築に関わることで、建築が経済活動にどう関わっているのかに気づけた事は、非常に大きな学びでした。

開発部の仲間と一緒に

|ワーク&バランス|やりたいこととの両立を

埼玉に住まいを構え、都内まで毎日電車で通勤しています。毎日の通勤は疲れますが、休みの日にある程度静かな環境で生活できることがリフレッシュになっています。妻も建築設計を生業としていますので、古いマンションを自分たちでリノベーションして住んでいます。自分の生活を受け入れてくれる環境を自分好みに作れるのはこの仕事の特権です。登山やキャンプ、音楽フェスといった共通の趣味や共通の知人も多いので、休みは妻と過ごしています。

|五ヶ瀬での経験|何年経っても立ち戻れる思想

自分は挫折が早かったなという実感があります。多少勉強ができるつもりで入学したら全然そんなことなくて、早々に自分の得意分野探しというかキャラ設定を無意識にしていたのだと思います。それが進路決定に大きく影響しています。

自身の人格形成には良くも悪くも寮生活以上に影響のあることはないと思います。当時は娯楽が制限された生活に窮屈さも感じていましたし、とんでもねえと思っていましたが、その分友人たちとの会話は濃く深いものでした。些末なことばかりでなく、お互いの未来の話も多くしました。ここで共有し考えたことは、何年経っても立ち戻れる思想のようなものとなっています。また、多感な時期に寝食を共にし、自分自身や他人とぶつかりながら自己形成を図っていったことで、人の懐への入り方や感情のコントロールの仕方が身についたような気がします。

|後輩に一言|悩んで立ち止まって考えて出した答え

結構遠回りのようで遠回りでないことがあります。効率とか時短とか求められる時代ですが、悩んで立ち止まって考えて出した答えが、効果的で合理的で強いことがあります。

また、10代、20代、30代での足踏みは、家族ができたり両親との関係が変わってきたりと、ライフステージが変わるので、同じ1年でも挽回する時間が異なってきます。

若さ溢れる今、思う存分悩んで葛藤して自己実現を図ってください。

影響を受けた人
「弥勒祐徳」今年101歳を迎える宮崎県の画家・彫刻家です。幼少期から自身にとって最も身近な芸術家で、生命力があり、躍動する作品にいつも胸を熱くさせられます。作品以上に、生き方や人となりに強く惹かれ続けています。
Print Friendly, PDF & Email

前の便り :

ホームへ戻る